ROIC/WACC業界分析レポート

【ROIC/WACC分析】化学品・化成品卸業界





業界ディスクリプション



  化学品・化成品卸業界は、国内の化学品・化成品メーカーの代理店として各種化学製品の中間流通を主に行っている。メーカーが原料を加工した中間原料や一次製品を仕入れ、付加価値を高めるために加工を施し、他の卸売業者に転売し市場に商品を供給している。 それぞれの企業ごとに扱う化学品・化成品の分野、製品は異なる。広範な産業分野に対して商品を販売するケースが多いが、それぞれの企業が最も大きな割合を占めている分野の市場動向に影響される。

 化学品・化成品卸の市場規模は、約16兆円である。化学品・化成品卸の仕入先である日本の化学工業の出荷金額は、経済産業省の「平成26年工業統計 産業編」(確報)によると、2014年は28兆1229億6000万円である。一方、経済産業省の平成28年商業動態統計(旧、商業販売統計)年報によると、化学製品卸売業の2016年における販売額は15兆580億円となり、前年比6.7%減と2年連続減少した。
 
 それぞれの顧客が属する業界に多様な化学製品を販売している化学品・化成品卸業界は、景気変動などで売上高・営業利益が大きく変動する。それゆえ、どの企業も変化に強い経営体質作りを目標に掲げている。各企業とも中期経営計画では、海外ビジネスの拡大を目指している。海外進出した日系企業との取引だけでなく、最近では現地の市場の開拓、海外での日本市場向け商品の調達、3国間貿易への対応へと事業の幅は広がっている。例えば、岩谷産業はマレーシアにヘリウムガスを充填する拠点を開設し、カタール産ヘリウムの日本向け出荷を開始した。ヘリウムは半導体の製造工程や医療用磁気共鳴画像装置(MRI)冷却向け需要が伸びている。 

 また、国外の化学産業では大型再編が加速化している。アメリカの化学大手ダウ・ケミカルとデュポンは17年9月1日付で経営統合し、世界最大の総合化学グループ「ダウ・デュポン」が新たに誕生した。スイスの農薬・種子メーカーで世界最大手シンジェンタは17年6月、中国国有企業の化学大手中国化工集団(ケムチャイナ)に買収された。16年9月、アメリカのモンサントは約660億ドル(約7兆円)でドイツのバイエルの傘下に入った。バイエルは農薬事業の一部をドイツのBASFに譲渡したため、BASFは他の大手企業に肩を並べることとなった。

 



 ROIC/WACC業界分析 



 上記の図表のY軸は、企業価値の時価(Market Value)と簿価(Book Value)を比較した数値である。X軸は、ROIC(投下資本利益率)/WACC(資本コスト)である。日本の全上場企業を調査すると図表の直線Y=(X-1)+1に収束する。企業が目指すべきは、資本効率性を意識したROIC経営により、X(ROIC/WACC)を大きくし、適切なIRによってY(時価総額/株主資本)を大きくしていくことである。

  化学品・化成品卸業界のROIC/WACCと企業価値の分析によると、全体的にROIC/WACCは低めの数値であり、時価総額も理論的な時価/簿価の推計値の割合よりも下回っている。しかし、中では三洋貿易(3176)がROIC/WACC=2.4と抜きんでている。次いで、岩谷産業(8088)の1.8である。

  ROIC/WACC(横軸)<1の企業は、WACC(資本コスト)がROIC(投下資本利益率)を下回っている。これは、株主が求める期待収益率/資本コストを上回ることで自己資本に加算される付加価値を生み出していないということである。これらの企業は、早急に自社の資本コストを求め、それを上回るROICを生み出す改善努力が必要である。( 詳細は下記に記載)

  ROIC/WACC(横軸)>1ではあるが、図表の線よりも下に属する企業は時価総額が理論的な企業価値の推計値よりも下回っているといえる。化学品・化成品卸業界の企業は、ほとんどがROIC/WACC>1になっているものの、株価が理論的な株主価値の推計値を下回っている状況である。まずは、自社の資本コストを求めたうえで、ROICの向上に努めつつ、資本コストとROICの比率のアピールを含めたIRが必要である。




 ピックアップ


 〇事業内容 
・化成品
工業用ゴム部品などに用いられるハロゲン化ブチルゴム、レギュラーブチルゴム、耐油性に優れたニトリルゴム、耐油/耐熱性に優れた水素添加NBR、耐候性に優れたEPDM等を幅広く、高品質の合成ゴムを市場へ供給している。高付加価値化学品の輸入、国内販売、輸出ならびに三国間取引きを行っている。医療、エネルギー、環境など成長分野への関連商材の開発にも努めている。
・機械資材
自動車シート用高機能部品の販売活動を行い、ペレットミル(造粒機)とその他関連装置及び接着機器のスペシャリストとして高い評価とマーケットシェアを獲得している。化学工業、石油化学、製薬、食品、機械、自動車産業、エネルギー産業などの研究所や品質管理部門への販売と技術サポートを行っている。
・海外現地法人 
SCOA(米国)、三洋物産貿易(上海)、San-Thrap International(タイ)などから、海外の先端技術を持ったメーカーから各種分析機器、試験機器を輸入している。今後は、成長する中国市場でのゴム材料の輸出入及びコンパウンド事業に注力していく。
・国内子会社
 ケムインター、コスモス商事を中心に石油、天然ガスなどを扱う。国内一流化学メーカーの代理店として、EPDM、シリコーンゴム、ポリクロロプレンゴム、ポリイソプレンゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴムなど汎用ゴムから高機能ゴムまで幅広く市場に供給している。


 三洋貿易(3176)は、2018年9月期第2四半期として、5期連続過去最高益を更新しており、先行投資負担を上回った。機械資材セグメントにおいては、自動車関連の好調に加え、バイオマス大型案件実現で大幅伸長を実現した。また、化成品セグメントも好調を維持している。今後は、基板事業の戦略として、既存コアビジネスの深化・ビジネスポートフォリオの明確化を掲げ、成長事業の戦略として、新規ビジネスのプロジェクト・グローバル展開の加速、新規投資案件の推進を掲げている。


岩谷産業(8088)
 〇事業内容 
・総合エネルギー事業 
LPガス、LNGなどエネルギー全般をはじめ、エネファーム、太陽光発電パネルやカセットこんろなど生活関連商品、産業用LPガス設備を取り扱う。宅配天然水事業「富士の湧水」やミネラル保湿化粧品「fujina」事業も展開している。
・産業ガス・機械事業 
酸素・窒素・アルゴンなどの空気分離ガス、水素、ヘリウム、炭酸ガスや半導体材料ガスなどの各種産業ガス、溶接・溶断ガスや溶接材料・溶断機など溶材関連、防災関連設備などの各種高圧ガス設備、FAシステム・半導体製造装置・環境機器などを取り扱う。
・マテリアル事業 
ミネラルサンドなど鉱物原料の輸入・資源開発、セラミックス、バイオマス原料やステンレス・アルミ・高合金など金属関連、植物由来のPET樹脂や成形品など機能樹脂関連、機能性フィルムや電池関連材料など電子材料を取り扱う。
・自然産業事業
冷凍野菜・惣菜類などの冷凍食品群に加え、冷凍粉砕技術を活用した健康補助食品、種豚事業、養豚設備・資材の提案、園芸資材や農業機械・資材、花卉運搬設備や植物工場などの販売事業を展開している。 


 岩谷産業(8088)は、ほとんどの事業において昨年度から増収しており、売上高は+14.1%、営業利益は+8.6%となっており、堅実に成長している。掲げていたPLAN18の目標値も経常利益、ROA、ROEすべてにおいて達成している。増収要因として、積極的なM&A推進による消費者戸数の拡大、国内シェア100%の液体水素を軸とした水素事業の拡大、中長期の視野に立った資源ビジネスの推進、独自の冷凍技術を活かした事業や植物工業などの新規事業展開などが挙げられる。今後は新たな中期経営計画のもと、新規事業・海外事業にも積極的に取り組んでいく。



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【執筆】
 アナリスト 小林祐士 

ジェイ・フェニックス・リサーチ株式会社(J-Phoenix Inc. ) 

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