ROIC/WACC業界分析レポート

【ROIC/WACC分析】不動産リノベーション業界





業界ディスクリプション


 不動産リノベーション業界は、買い取った不動産をオーダーメイド方式で全面改修し新たな付加価値を創出する。子どもが巣立った後に住宅を小さくすることで維持管理コストを削減し生活者のニーズに適した快適な生活環境を整える「減築」は事業例の一つとして注目を集めている。市場規模は 3兆 円以下 ( 2010 年度) から 6兆 円以上 ( 2017 年度) と急増しており、 2018 年 10 月時点での適合リノベーション住宅は累計 3万9580 件に及ぶ。

 中古住宅の流通市場発展に更なる拍車をかけるリノベーション事業だが、その事業領域は住宅・マンションに留まらない。工期や建築費用が少なくて済むことから、都心部のオフィスにおいてもリノベーション事業が進んでいる。築 60 年の歴史を誇る大手町ビルも 2021 年完成を目標に改築が進むリノベーション事業の一例である。また、日本経済新聞によると震度 6 強の地震によって倒壊するリスクのある大型建築物が全国合計 858 棟存在し、増加する空き家問題も考慮すると今後更なる需要の拡大が期待できる。

 企業オフィスやホテルの再開発事業に尽力し不動産リノベーション業界をリードしてきた企業は数多いが、大手不動産や電鉄企業も参入を本格化し、市場は完全競争に近い状態と考えられる。


ROIC/WACC 業界分析


 上記の図表の Y 軸は、企業価値の 時価(Market Value) と 簿価(Book Value) を比較した数値である。 X 軸は、 ROIC(投下資本利益率)/WACC(資本コスト) である。日本の全上場企業を調査すると図表の直線 Y = (X-1)+1 に収束する。企業が目指すべきは、資本効率性を意識した ROIC 経営により、X( = ROIC/WACC) を大きくし、適切な IR によって Y( = 時価総額/株主資本) を大きくしていくことである。

  不動産リノベーション業界の X( = ROIC/WACC) と企業価値の分析によると、全体的に X は低めの数値であり、時価総額も理論的な 時価/簿価 の推計値の割合を下回っている。しかし、中ではサンフロンティア不動産(8934)が X = 2.7 と抜きんでて高い値をとっている。次ぐのは、トーセイ(8923)の X = 1.8 である。

  ROIC/WACC(横軸) < 1の企業は、 WACC(資本コスト) が ROIC(投下資本利益率) を下回っている。これは、 株主が求める期待収益率/資本コスト を上回ることで自己資本に加算される 付加価値 を生み出していないということである。これらの企業は、早急に自社の 資本コスト を求め、それを上回る ROIC を生み出す改善努力が必要である。( 詳細は下記に記載)

  ROIC/WACC(横軸) > 1ではあるが、図表の線よりも下に属する企業は 時価総額 が 理論的な企業価値の推計値 よりも下回っているといえる。不動産リノベーション業界の企業は、ほとんどがROIC/WACC > 1になっているものの、 株価 が 理論的な株主価値の推計値 を下回っている状況である。まずは、自社の 資本コスト を求めたうえで、 ROIC の向上に努めつつ、 資本コスト と ROIC の比率のアピールを含めた IR が必要である。 


 ピックアップ


〇事業内容
・不動産投資開発
不動産再生事業と不動産開発事業の2つの事業を主に展開。再生事業では取得した土地の資産価値を改善させ売却。  2017 年では総額 20億 円を超える取引を受注。開発事業においても顧客ニーズを掴んだ不動産販売によって増収増益。新規事業として新築マンション事業へ進出する意向を示している。

・不動産コンサルティング
富裕層顧客をメインターゲットに不動産購入や売却、仲介の支援を行う。税理士や司法書士といった専門家と提携し最適な資産ポートフォリオプランを構築する事業によって、リピーター顧客と大型案件の創出に成功。

・不動産マネジメント
投資家の運用ニーズに合わせた不動産投資ファンドの構築を支援する事業。専門知識と豊富な経験を活かし不動産証券化を目指す。また、テナントやオーナーに向けた高稼働の不動産マネジメントにも取り組む。


 不動産の価値を向上させるべくリノベーション事業やアセットマネジメント事業に尽力。東京都品川区の大手優良企業法人へのバルク販売や沖縄の大型プロジェクトを手掛け、 7 期連続の増収増益を達成。
ホテル再生事業や M&A 仲介事業を通じてインバウンドを対象とした新たな差別化や優位性の構築を図る。

 〇事業内容 
・不動産再生事業
資産家やビルオーナーのニーズに合わせて不動産リノベーションやマネジメント、コンサルティングを行う。
東京都心部の中小型オフィスビルを快適で上質な空間に改修するリノベーション事業に特化しており、現在の売上高約 85 % を占める。

現在は富裕層顧客をメインターゲットに事業を展開しているが、中期経営計画によるとホテル事業やアジア諸国への事業展開、 M&A の積極活用を通じて 5 年後における売上高や経常利益の 2 倍成長を目指す。

ホテル事業では佐渡や飛騨高山といった地域創生型ホテル事業が 2018 年にスタートしたが、 2019 年においても東京銀座や京都、大阪といった首都圏内におけるビジネスホテルを開業予定。

海外事業は企業の進出ニーズが高いベトナム・インドネシア等のアジア諸国を中心に、都市型高層分譲マンションの開発に着手。
中長期的に安定した成長を遂げるべく事業拡大を目指す。





ROIC経営導入支援モデル 




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【執筆】 
 アナリスト 町田 啓 

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