ROIC/WACC業界分析レポート

【ROIC/WACC分析】電力供給サービス業界



業界ディスクリプション


 電力供給サービス業界全体の市場規模は2018年で20兆円以上である。市場規模は2016年から2018年にかけて約4%増加しており、再生可能エネルギー需要の拡大などを加味すると今後も成長すると考える。電力供給サービス業界は電力卸売りサービスと電力小売りサービスに二分される。電力卸売は主に、実際の電気の発電と小売り業者への送配電で、電力小売りは一般家庭や工場・オフィスビルなど法人への売電である。提供するサービスは、基本的に差別化不可能な電力のみが商材となるが、2016年4月に電力の小売全面自由化以降は電気とガスのセット割、緊急時の駆けつけサービスの提供、時間帯別の割安料金プランの提案など電力に加え様々な付加価値を乗せることが電力小売り業者に求められている。特に電気卸売り業者は原油、石炭、天然ガスなど燃料費が大きなコスト決定要因となっており、2018年3月期決算では、東電HD(9501)や関西電(9503)は燃料費を抑制したことが純利益増加につながった。
 もともとは東北、東京、中部など大手電力会社10社の寡占状態で、それらが各々の地域で発電・卸売り・小売りとサプライチェーン全てを担う「発送電一貫」体制を取っていた。2012年4月に日本政府が「16年に小売りの完全自由化」を約束して以降、異業種から特に電気小売り業への参入が相次いだ。また、2011年8月にFIT法案が成立して以降、電力卸売り業では再生可能エネルギー発電業者の新規参入が相次いでいる。結果、市場構造は完全競争に近い寡占状態であるといえる。
 電力業界は他の業種の企業に非常に参入しやすい業界である。2016年4月に電力小売りが自由化されて以来、東京ガスや大阪ガスなどガス会社や総合商社、石油企業など様々な業種からの電力事業への参入が進んでいる。また、電力卸売り企業のJパワーや関西電力が小売り事業に進出するなど、市場内でも電力卸売りから小売りへの参入が進む。


ROIC/WACC 業界分析


 上記の図表のY 軸は、 企業価値の時価 (Market Value)と簿価(Book Value)を比較した数値である。X 軸は、ROIC(投下資本利益率)/WACC(資本コスト)である。日本の全上場企業を調査すると図表の直線Y=(X-1)+1に収束する。企業が目指すべきは、資本効率性を意識したROIC経営により、X(=ROIC/WACC)を大きくし、適切なIRによってY(=時価総額/株主資本)を大きくしていくことである。
 電力供給サービス業界のROIC/WACCと企業価値の分析によると、全体的にROIC/WACCは上場企業平均と同等の分布、時価総額も均すと理論的な 時価/簿価の推計値といえる。しかし、中ではROIC/WACC(横軸)<1の企業は、WACC(資本コスト)がROIC(投下資本利益率)を下回っている。これは、株主が求める期待収益率/資本コストを上回ることで自己資本に加算される付加価値を生み出していないということである。これらの企業は、早急に自社の資本コストを求め、それを上回るROICを生み出す改善努力が必要である。(詳細は下記に記載)
  ROIC/WACC(横軸)>1ではあるが、図表の線よりも下に属する企業は時価総額が理論的な企業価値の推計値よりも下回っているといえる。電力供給サービス業界の企業は、均すと株価が理論的な株主価値の推計値を下回っている状況である。これらの企業はまず自社の資本コストを求めたうえで、ROICの向上に努めつつ、資本コストとROICの比率のアピールを含めたIRが必要である。

ピックアップ

〇事業内容
・ 再生可能エネルギー開発・運営事業 
・ 再生可能エネルギー発電事業
(・プラスチックリサイクル事業)

 レノバ (9519)は、その国内外市場動向の先読み力に優位性があると考えられる。
 国内の再生可能エネルギー (以降 再エネ) 市場の市場環境で特筆すべき点は、今後の再エネの主力電源化に向けた動きである。従来、 再エネの売電価格 は FIT 制度の下固定されていたが、 FIT の導入から約7年が経った現在、再エネを 固定価格 でなく入札による 市場価格 で売電することが目指されている。この動きが進むことにより、今までブルーオーシャンであった同市場が、コスト競争力が高い企業が生き残る市場に変化する可能性が高い。
 このような市場環境の変化を受け、同社は「コストリーダーへの進化」を目指し、戦略策定を行う。具体的には、独立系・ 再エネ専業の上場企業としての優位性を活かすことで幅広い電力事業者とのパートナリングを行うことや、再エネ分野で大きく先行する欧州からの新技術を導入することなどである。これらの優位性は実際の業績にも反映されており、2018年5月期は10%ほど増収し、営業利益も増益した。

 一方で海外市場に目を移すと、経済成長が著しいアジア諸国では電力需要の拡大と再エネ導入の必要性から再エネ市場は FIT 制度が整備された状況で今後拡大期を迎える国が多い。このような市場環境では先述のコスト競争力に比べ開発力が高い企業が優位に立つ可能性が高い。これを受けて同社はこのような国・地域をターゲットとして事業開発を進めることを目指す。具体的には、発電事業に事業開発初期フェーズから参画することで開発の付加価値を上げようとしていることが挙げられる。
 これら国内、国外両市場で上述の市場の先読み力を活かし先行者メリットを享受することが同社の戦略である。


〇事業内容
・省エネルギー支援サービス事業 
・グリーンエナジー事業

 エフオン(9514)の特徴は、主力事業である再生可能エネルギー事業が、木質バイオマス発電に特化していることである。
 同社の強みは、木質バイオマス発電所の開発・施行から保守運用までのサプライチェーン全体を自社で担うことによる安定した経営と、そのサプライチェーン全体を支える高い技術力である同社自ら山林を経営し、発電に必要な木材の原木を調達する。加えて発電所の保守運用を外部に委託せず自社で担う。これにより、 事業リスク を減らすとともに 販管費 を 売上利益率 の約 16 % と低く維持することができていると考えられる。また、10年間積み上げてきた発電所運用ノウハウと多様な木材燃料に対応する高い技術力により、年間90%以上の高い 設備利用率 が実現可能となっていると考えられる。それに加え、 2011 年以降施行された FIT 制度により、安定した 電力価格 で発電・売電できることも安定した事業経営の一因となっている。
 これら強みは実際の業績にも反映されており、2018年6月期の営業利益率 は約27.8 %であり、営業利益は前年同期比で約20%増益した。




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 【執筆】
 アナリスト 土田慧 

 ジェイ・フェニックス・リサーチ株式会社(J-Phoenix Inc. )

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