ROIC/WACC業界分析レポート

【ROIC/WACC分析】老人ホーム・介護サービス業界




業界ディスクリプション

 介護保険制度の開始とともに民間事業者が参入したことで成立した当業界では、高齢や障がいにより自力で日常生活を送ることが困難になった人へと食事や入浴などの介助やリハビリを提供する介護サービスや、このサービスを提供する施設を運営する老人ホームサービスを提供している。顧客となる要介護者と要支援者は、2016年時点で約620万人であり、この数字は10年連続で増加したものだ。主なコストは施設費と介護現場の人件費であるため、粗利率はサービス内容と経営費に左右されている。

 参入障壁が低いため中小企業が当業界の主な担い手となっていて、特に近年ではM&Aにより異業種からの参入例が多く、比較的設置が容易で初期投資の少ない介護ステーションなどではフランチャイズ展開や開業支援ビジネスが台頭してきている。このような状況下ですら高まるニーズのすべてに対応することはできておらず、待機者には在宅介護でホームヘルパーやデイサービスが提供されている。

 日本において現在急速な高齢化が進む一方で、約13億の人口を抱える中国においても、これまでの世界各国の水準を大きく上回るスピードで高齢化が進展している。これは2050年には高齢者の4人に1人が中国人になると予想されるほどであり、当事業のノウハウが成熟していない中国でのニーズの高まりは容易に想像できる。既に国内においてすら人材が不足している状況で、AI技術の導入や医療機関との連携などの最新技術を取り入れることで現場における生産性を向上させる企業や、少子高齢化が予想される海外各国へと進出する企業が現れている。



ROIC/WACC業界分析

 上記の図表のY軸は、企業価値の時価(Market Value)と簿価(Book Value)を比較した数値である。X軸は、 ROIC(投下資本利益率)/WACC(資本コスト) である。日本の全上場企業を調査すると図表の直線 Y = (X-1) + 1 に収束する。企業が目指すべきは、資本効率性を意識したROIC経営により、 X( = ROIC/WACC) を大きくし、適切なIRによって Y( = 時価総額/株主資本) を大きくしていくことである。  

 老人ホーム・介護サービス業界の ROIC/WACC と企業価値の分析によると、 X( = ROIC/WACC) は全体的に低めの数値であるが、ほとんどの企業が X > 1の部分に位置している。このうち、光ハイツ・ヴェラス(2137)とN・フィールド(6077)は共に X の値が 3.5 を超える業界最高水準にあるのだが、 Y( = 時価総額/株主資本) の値の差が最も大きい組み合わせでもある。
 
 X( = ROIC/WACC) < 1の範囲に属する企業は、 WACC(資本コスト) が ROIC(投下資本利益率) を下回っている。これは、 株主が求める期待収益率/資本コスト を上回ることで自己資本に加算される付加価値を生み出していないということである。これらの企業は、早急に自社の資本コストを求め、それを上回るROICを生み出す改善努力が必要である。( 詳細は下記に記載)  

 X( = ROIC/WACC) > 1 の範囲には属するが、図表の線よりも下に属する企業は時価総額が理論的な企業価値の推計値よりも下回っているといえる。老人ホーム・介護サービス業界の企業はほとんどがROIC/WACC > 1になっているものの、 X( = ROIC/WACC) の値が2、3番目に大きい光ハイツ・ヴェラス(2137)とヒューマンホールディングス(2415)の株価は、理論的な株主価値の推計値を下回っている状況である。これらの企業は、自社の資本コストを求めたうえで、ROICの向上に努めつつ、資本コストとROICの比率のアピールを含めたIRが必要である。




ピックアップ

〇事業内容
・老人ホーム事業(セグメントによる分類なし)
 介護付有料老人ホーム(ヴェラスシリーズ), サービス付き高齢者向け住宅(クオーレシリーズ), デイサービス

 光ハイツ・ヴェラス(2137)は、昭和62年設立の老人ホーム提供企業の一つであり、主に上記の3サービスを提供している。創業時に掲げていた「人生80年の理想郷を創る」という企業理念は、高齢化社会の進行とともに延び続ける平均寿命にあわせて、現在では「人生100年の理想郷を創る」となっている。
 いわゆる老人ホームのもつ閉塞的は空間とは異なり、アスレチックルームやスカイラウンジなど他の居住者との快適な時間を共有できる「小さな街」のような施設・サービスを提供している。一時金方式と月額家賃方式のそれぞれの特徴を活かした営業と、厚生労働省によるオレンジプランへの参加、施設見学を含めた積極的な地域への開放などに取り組んだ結果、全施設平均入居者は94.1%に上っている。


〇事業内容
・人材関連事業
 建設や住宅、不動産分野での人材紹介・派遣サービス, 海外ITエンジニアを常用雇用する人材派遣サービス等
・教育事業
 社会人教育, 全日制教育, 児童教育, 国際人教育, 保育
・介護事業
 デイサービス, 小規模多機能施設, 施設型サービス
・その他事業
 ネイルサロン運営, スポーツ事業, IT事業等

 ヒューマンホールディングス(2415)は、「SELFing」を経営理念とし、顧客が自身の求める理想像へ近づくことができ、さらにそれが社会のニーズとマッチするように様々な教育やアドバイスを提供している。この一環として介護事業を展開しており、介護サービス業界におけるスタッフ不足に対しては効率的な人員配置による稼働率の上昇や、ドミナント戦略に基づく施設展開と人事異動によるスタッフの定着率向上によって対応を図っている。






RIOC経営導入支援モデル



本資料には予想・見通し・目標・計画等の将来に関する事項が含まれております。これらは当社が本資料作成時点において入手した情報に基づく、当該時点における予測等を基礎として作成されております。これらの事項には一定の前提・仮定を採用しており、一定の前提・仮定は当社の主観的な予想を含むも のも含まれております。また、様々なリスク及び不確実性により、将来において不正確である事が判明し、あるいは将来においてこれらの予想は実現しない事があります。その為、本資料に掲載されている予想・見通し・目標・計画等の将来に関する事項について、当社はそれらの情報を最新のものに随時更新すると いう義務も方針も有しておりません。同時にその内容の正確性、完全性、公平性及び確実性を保証するものではありません。従いまして、本資料を利用した結果生じたいかなる損害についても、当社は一切責任を負うものではございません。



【執筆】 
 アナリスト 本田泰三 

ジェイ・フェニックス・リサーチ株式会社(J-Phoenix Inc. ) 

住所:東京都中央区日本橋茅場町一丁目8-1 茅場町一丁目平和ビル9階 

Tel : 03-5532-7647 /  Fax : 03-5539-4881 

ウェブサイト https://www.j-phoenix.com