超過利潤法業界分析

CRM業界における割安株の分析



1. JPRの分析手法~超過利潤法による割安の判断



 超過利潤とは何か?                         

  ジェイ・フェニックス・リサーチ株式会社(JPR)では超過利潤法を用いた株主価値(Shareholder Value、SV)の分析を行っている。超過利潤とは、株主資本や有利子負債の加重平均のコスト(Weighted Average Cost of Capital:WACC)を上回るキャッシュフローを示し、株主価値を計測する指標である。超過利潤は、経済付加価値、EVA®(Stern Stewart & Co.の登録商標)とも呼ばれる。JPRの代表取締役は、かつて、Stern Stewart & Co.のコンサルタントとして、花王株式会社のコンサルティングをおこなうなど、超過利潤法については精通している。具体的な計算方法は以下の通りである。

  超過利潤の計算方法




     

 (出所)ジェイ・フェニックス・リサーチ作成

超過利潤は株主価値分析において極めて重要な概念
 理論的には超過利潤がプラスになるとPBRは1倍以上になる。また、花王株式会社、ダイキン工業株式会社など日本を代表する上場企業が、株主価値に直結する指標として経営管理に取り入れている。超過利潤は株主価値分析において極めて重要な概念だといえる。特に、長期的な視点で株主価値を評価する上で有用とされ、世界の長期的な機関投資家の多くが導入している。

▉超過利潤法による株主価値分析の特徴 


超過利潤法では株主価値を3つに分解して分析 
 超過利潤法では、株主価値を、株主資本+超過利潤価値+成長価値という形で、3つの価値の合計として算出する。超過利潤価値とは、現状の超過利潤が毎年、永遠に生み出されるときの価値を示す。具体的には、超過利潤÷WACCで計算される。WACCが5%の場合は超過利潤÷5%、別の言い方をすれば超過利潤の20倍(1÷5%=20)が超過利潤価値となる。当期利益にPERをかけて株主価値を推計するのと同じ考え方である。成長価値は、将来、超過利潤価値がどの程度増大するかを表す。
 株主資本と超過利潤価値の合計をCurrent Value (現状価値:CV)と呼ぶ。CVは、現状の利益が続き、一切その後増益も減益もしない場合の株主価値を示す。成長価値を見込まない保守的な株主価値の値を示す。
 なお、超過利潤法に基づく株主価値は一般的に周知されている DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)による株主価値と理論的に等しい

 ■ 図2:超過利潤法による株主価値の3つの分解 





(出所)ジェイ・フェニックス・リサーチ作成
 JPRでは、この超過利潤法を用いた株主価値の分析を日本の上場企業約3,000社に対して日々行っている。精緻な分析には、前提となるWACCの正確な計算が極めて重要になる。JPRでは上場企業を400程度の業種に分類し、それぞれの業界資本コスト等を算出しながら、WACCについて精緻な推計を日々行っている。詳細な計算方法は、https://roic.j-phoenix.com/に記載しているので参照されたい。

▉超過利潤法の CV を用いた割安株の発掘方法~MV/CV 分析 


MV/CV<100%であれば割安を示唆
 企業の中には、超過利潤法を用いた株主価値が時価総額(Market Value)を大きく下回っているケース、すなわち大きなバリューギャップ(Value Gap:VG)が存在するケースがある。この場合は、大幅な割安状態にある可能性を示す。株主価値+超過利潤価値であらわされるCVを用いると割安度合いを簡易的に測ることができる。
 CVよりも時価総額(Market Value: MV)が低い(MV/CV<100%)場合は、割安の可能性がある。少なくとも成長価値がゼロであることを示している。その数値が極端に低い場合、例えば30%台であれば、とても割安であることを示唆している。一方でMV/CV>100%の場合は成長価値が織り込まれた状態であり、少なくともMV/CV<100%の企業よりも割安度合いは低いと考えられる。

MV/CV分析




(出所)ジェイ・フェニックス・リサーチ作成
 JPRでは、今期分の成長価値をすでに株価に織り込まれているとの前提で、来期の業績をベースに来期ベースのCVも算出している。来期のCVの算出は以下の図を参照。

 来期ベースのCVの算出方法




 ※1:中期経営計画がある場合⇨企業予想値を採用、中期経営計画がない場合⇨今期売上高成長率をもとに弊社が算出
 ※2:今期投下資本/売上高比は、直近四半期決算のバランスシートベース

(出所)ジェイ・フェニックス・リサーチ作成 




 2. CRM業界の割安株分析




▉IoT・AI時代で高成長が期待されるCRM業界

  本資料では前述した分析手法によりCRM業界の割安株を分析する。CRMとはCustomer Relationship Managementの略称であり、顧客関係管理を意味する。企業の膨大な顧客情報を管理・分析することで、売上拡大と収益性向上を目指す手法であり、顧客データを使った顧客抽出や顧客満足度や購買データの分析を行う。顧客を中心とするビジネスモデルやインターネットマーケティングを導入する企業の増加に伴いCRMの需要は年々増加している。さらに自動車メーカーや保険会社のような一般企業だけでなく、教育機関や医療機関でもCRMは導入されており、多種多な業界においてCRMの需要は高まっている。

 ■CRM事業の概要




(出所)ジェイ・フェニックス・リサーチ作成
 CRM市場の中でもSaaS(Service as a Software)型のCRMがトレンドとなっている。クラウドサービスの導入で労働生産性の向上が見込まれること、更新費用が安くコストダウンにつながることがSaaS型の需要を高めている。また、SaaSはサブスクリプションモデルを使用することで中長期的な売上の安定性に繋がるため、SaaS型のCRMを提供する企業の増加が見込まれる。特に、地方中小企業に関してはITシステムの導入が遅れ、導入余地が大きいとされている。

▉CRM企業の来期ベースMV/CV分析

 CRM業界は高成長が期待されるため、MV/CVが100%以下の場合は割安の可能性が高いといえる。日本の上場企業のうち主にCRM業界に属すると判断した企業は13社である。それらの企業は、基本的には、CRMのパッケージソフトやクラウドサービスを提供している。市場全体として、成長期待が高く、株価にも成長価値が大きく反映されている企業が多い。ブレインパッド(3655)やALBERT(3906)などは、MVがCVの数倍を付けるなど高く評価されている。一方で、パイプドホールディングス(3919)は、MV(時価総額)がCV(Current Value)の30.8%となっており、市場での評価が非常に低い企業も存在する。今回は、CRM業界においてMV/CVが相対的に低い企業5社(MV/CV<80%、赤字の企業)に対して、個別企業の分析を行った。以下は、割安度の高いものから紹介する。なお、下記の表でROICとはNOPAT÷投下資本であり、ROIC>WACCであると超過利潤がプラスとなる。

CRM企業の来期ベースMV/CV・ROIC・WACC一覧





(出所)FactSet、日経Needsよりジェイ・フェニックス・リサーチ作成   



3. MV/CVが低い(<80%)企業についての分析



 

パイプドホールディングス(3919)MV/CV=30.8%


 ■ 売上高と営業利益率推移 




(出所)ジェイ・フェニックス・リサーチ作成。
(注)計算方法は、予測は「来期ベースのCVの算出方法」参照。
 
事業概要:パイプドHD(3919)

(出所)会社開示資料よりジェイ・フェニックス・リサーチ作成

 ネットワークアプリケーションソフトウェアやそれに付随する情報資産プラットフォーム事業、販促CRMソリューション事業、広告事業、社会イノベーション事業、xTech事業の5つの事業を展開している。情報資産プラットフォーム事業は、人手不足社会における課題解決の一助として、官公庁・金融など幅広い業種の顧客の保有情報資産を安全に管理・保管し、顧客のコスト低減・業務効率化のために、Webメール機能やアプリケーション等との連携機能を提供している。販促CRMソリューション事業は、インターネット広告の制作業務やWebシステム開発業務請負、アパレル・ファッションに特化したECサイト構築および運営受託等を提供している。広告事業は、クライアントのサービス認知度向上、ブランド力向上等マーケティング支援など顧客の目的に応じたプロモーション設計や広告コンテンツの制作・開発・運用を行っている。社会イノベーション事業は政治・選挙情報サイト等の運営を行っている。 

【優位性・成長性】
 クラウドサービスなどITを基盤とした多様なサービスを手掛けている。中でも特筆すべきは、中堅・大手企業向けに展開している「SPIRAL」という情報プラットフォームである。スマホアプリ開発・運用に必要なサーバー側の機能を提供することで成長してきたこのサービスは、CRM・セミナー管理・社員の勤怠管理等幅広い機能を搭載している。このプラットフォームは拡張性の高さ、システム連携の柔軟性 ・携帯キャリア向けメール配信の安定稼働実績に対する信頼 ・営業担当や技術サポートのスピーディーかつ真摯な対応など多くの強みがあり、故に多くの企業に導入されている。顧客にアコム株式会社、株式会社セブン&アイ・フードシステムズ、SBI証券株式会社等を抱えている。
 2014年度から2017年度では、売上高はCAGR24.0%、営業利益はCAGR14.4%を達成しており、現在は中期経営計画2020の実現のために積極的な人材育成に重点を置いている。事業投資として、株式会社VOTE FOR、株式会社アイラブ、株式会社エルコインを設立した。

  MV/CV分析:パイプドHD(3919)



(出所)※中期経営計画の業績目標よりジェイ・フェニックス・リサーチ作成
(注)2019年2月12日終値ベース

 株主資本と超過利潤価値を合計したCV(現在価値)は218億円で、MV(株式時価総額)は 67 憶円(2019 年 2 月 12 日終値)であり、CV と MV の差であるバリューギャップは 152 憶円と算 出された。また、超過利潤価値を算出する際に使用する来期売上高は当社中期経営計画の数値を採 用しており、来期売上高予想 73 億円となっている。 



 TDCソフト(4687) MV/CV=64.8%


 ■売上高と営業利益率推移




(出所)ジェイ・フェニックス・リサーチ作成。
(注)計算方法は、予測は「来期ベースのCVの算出方法」参照。

事業概要:TDCソフト(4687)

(出所)会社開示資料よりジェイ・フェニックス・リサーチ作成

  主に金融機関などの法人向けにアプリケーションソフトを開発・販売している。非金融関連にも拡大し、官公庁や通信業、製造業などにも展開している。金融機関向けは、保険業向けなどで堅調に推移し、その他の分野向けに関しても増加している。新たに次世代型システムソフトウェア開発に向けた投資で大学などと提携し「人工知能・データサイエンス分野」や「RPA分野」などにも積極的に進出している。今後は中期経営計画に基づき、投資・研究から事業促進へのステップアップを図っていく。

【優位性・成長性】
 CRM事業では、Financials(統合会計)、HR(人事管理)、CRM(顧客管理)、SCM(購買・生産・受注)およびBI(意思決定支援)の機能を搭載した「Oracle E-Business Suite」を提供する。サポート体制も充実しており、認定コンサルタントを含む技術者が40名で、導入コンサルティングから開発運営保守まで行う。買い手の交渉力が比較的強く競合も多いが、システム開発の技術力によって様々な機能が統合化されたシステムサービスで高い付加価値を生んでいる。ストック型の収益モデル(SaaS)で大口顧客との契約が多くあるため収益面は安定している。主要顧客である地方金融機関の将来性なども加味したうえで新規業種の顧客をどれだけ獲得できるかが着目点といえる。サービス内容は全般的に社内でインフラ化していくものであり、今後も付加価値のある機能開発・技術が求められる。

MV/CV分析:TDCソフト(4687)



(出所)今期の売上成長率からよりジェイ・フェニックス・リサーチ作成
(注)2019年2月12日終値ベース

 株主資本と超過利潤価値を合計したCV(現在価値)は346億円で、MV(株式時価総額)は 217億円(2019年2月12日終値)であり、CVとMV の差であるバリューギャップは128億円と算 出される。また、超過利潤価値を算出する際に使用する来期売上高は今期売上高成長率を基に弊社 が算出し、来期売上高予想は 261 億円である。 


 アイティフォー(4743) MV/CV=67.2%


売上高と営業利益率推移



(出所)ジェイ・フェニックス・リサーチ作成。
(注)計算方法は、予測は「来期ベースのCVの算出方法」参照。

 ■事業概要:アイティフォー(4743)

(出所)会社開示資料よりジェイ・フェニックス・リサーチ作成

 システムインテグレーターとして、主に金融機関や流通・小売業向けのシステム開発、BPO関連のサービスソフトウェアを手掛ける。またRPAにも注力し、金融機関や地方自治体への導入を開拓している。売上構成比をみると、金融機関向けのシステムソリューションがおよそ3割を占め、次いで流通などが占めている。顧客業種を絞ることでシステムノウハウを形成、独自のソリューションとネットワークインフラを含むサービス開発に取り組んでいる。また、AI、IoT、ブロックチェーンを活用した新商品の開発にも取り組んでいる。

【優位性・成長性】
 労働人口が減少する中で、バックオフィスに限らずフロントオフィスにも対応したRPA業務自動化の商品に期待。他社商品と違い適用可能な業務範囲が広く、自動連係アプリケーションが豊富なことが強み。顧客として金融機関・地方自体を新たに開拓し、キャッシュレスシステムも、金融機関・百貨店・鉄道に好評で、地方銀行に反資金浄化システムの導入の増加が見込まれる。 2018年3月期の決算で過去最高純利益である1,124百万円を達成。2019年3月期もこの過去最高当期純利益を更新する予定している。この要因として、不採算案件の撤廃、コールセンター向け業務効率化が挙げられる。金融向け債権管理システムが伸び悩むが全体としては好調である。

 ■MV/CV分析:アイティフォー(4743)



(出所)※中期経営計画の業績目標よりジェイ・フェニックス・リサーチ作成 
(注)2019年2月12日終値ベース

 株主資本と超過利潤価値を合計したCV(現在価値)は326億円で、MV(株式時価総額)は 238 億円(2019 年 2 月 12 日終値であり、CV と MV の差であるバリューギャップは 88 億円と算出 された。また、超過利潤価値を算出する際に使用する来期売上高は今期売上高成長率を基に来期売 上高予想を135 億円と算出した。 



スカラ(4845) MV/CV=70.6%


  売上高と営業利益率推移



(出所)ジェイ・フェニックス・リサーチ作成。
(注)計算方法は、予測は「来期ベースのCVの算出方法」参照。

 ■事業概要:スカラ(4845) 

(出所)会社開示資料よりジェイ・フェニックス・リサーチ作成 

 法人向けに、サイト内検索やFAQなどのASPを主に提供する。主力のCRM/SFAソフトウェア「eセールスマネージャー」などのSFA事業や営業支援などのフィールドマーケティング事業などそれぞれが売上構成の25%以上を占めている。新規のコールセンター向けカスタマーサポート事業が拡大し、売上増に貢献する。ターゲット法人顧客の業容は広く、各HPやECサイトにサービスの需要があり、大手企業を含む多数の取引実績・提供事例がある。

【優位性・成長性】
 「eセールスマネージャー」は、営業・技術・マーケティング・総務部門などどの部門部署でも利用でき、一元的に情報を管理することができる。SaaS/ASP事業とSFA事業、フィールドマーケティング事業の三事業はストック型で売上高が安定的に推移しており、今後の顧客継続率に着目していきたい。既存のサービスの機能追加・改善が見られ、新規顧客の開拓に向けた営業も注力している。コールセンター向けサービスは、成長が著しく新たな売上の柱になることが期待される。顧客には、上場企業を含む大企業が多数存在し、サービスに対する信頼や市場の評価は非常に高いと判断している。

 MV/CV分析:スカラ(4845)



 (出所)※中期経営計画の業績目標よりジェイ・フェニックス・リサーチ作成
 (注)2019年2月12日終値ベース

 株主資本と超過利潤価値を合計したCV(現在価値)は239億円で、MV(株式時価総額)は 127億円(2019年2月12日終値)であり、CVとMV の差であるバリューギャップは112億円と算 出される。また、超過利潤価値を算出する際に使用する来期売上高は今期売上高成長率を基に弊社 が算出し、来期売上高予想は 205 億円である。 


 コラボス(3908) MV/CV=76.3%


 売上高と営業利益率推移



(出所)ジェイ・フェニックス・リサーチ作成。
(注)計算方法は、予測は「来期ベースのCVの算出方法」参照。

 事業概要:コラボス(3908)

(出所)会社開示資料よりジェイ・フェニックス・リサーチ作成

 コールセンターで利用される各種システムをクラウドサービスで提供。通話機能と顧客情報管理機能を一元管理できるシステムを提供できるのが特徴。大手から中小規模までコールセンター向けのクラウドサービスを開発・販売・提供している。月額課金制(サブスクリプション)で、お客様相談室や製品お問い合わせセンターなどで顧客情報管理などができるシステムである。代表的な機能としては、「電話システム」着信時の振り分けや、自動架電機能、お問い合わせの内容を記録保存し、業務効率化を図る顧客情報管理システム、通話を録音し、音声データとして保存、聞き漏らし防止とトラブル防止に活用する通話録音システムがある。インフラシステムとして、長期の利用顧客獲得を狙う。3年以上の利用顧客は全体の62%である。なお成長戦略として、業務提携によって、新たな付加価値の提供するための商品サービス開発に力を注いでいる。

【優位性・成長性】
 オンプレミス(自社開発)からクラウドサービス転換する潮流のなかで、コールセンター向けにサービスを提供する。AVAYA製のIP電話交換機システムを提供する「@nyplace」は、導入コストを抑えられる一方で、IP電話機をレンタルで提供するためスイッチングコストを引き上げている。それに付随して、コールセンター向け顧客情報管理システム「COLLABOS CRM」と「COLLABOS CRM Outbound Edition」のCRM関連クラウドサービスを展開する。事業の状況に合わせてコストをコントロールしたり、業務効率化を可能にする。機器と複数のクラウドサービスを同時提供することで、付加価値を生み出す。

 ■MV/CV分析:コラボス(3908) 



(出所)※中期経営計画の業績目標よりジェイ・フェニックス・リサーチ作成 
(注)2019年2月12日終値ベース

 株主資本と超過利潤価値を合計した CV(現在価値)は 44 億円で、MV(株式時価総額)は 30 億円(2019 年 2 月 12 日終値)であり、CV と MV の差であるバリューギャップは 14 億円と算出 される。また、超過利潤価値を算出する際に使用する来期売上高は今期売上高成長率を基に弊社が 算出し、来期売上高予想は23 億円である。 



 5社のMV/CV比較


 【5社MV/CV比較】



(出所)ジェイ・フェニックス・リサーチ作成
(注)2019年2月12日終値ベース

 上記の図はCRM業界に属する企業の内、MV/CV<80%となる5社のMV/CVを比べ、CVとMVの差(バリューギャップ)が大きいものから順に並べたものである。それぞれの企業の上に記載されている数値は、CVを100%とした時のMVの値である。従って数値が小さいほど割安評価を受けているということになり、CVとMVの差であるバリューギャップが拡大する。5社全てが市場において割安評価を受けており、中でもパイプドホールディングスはCVがMVの2倍以上となっており、特に割安評価を受けていると言える。



4. パイプドホールディングス(3919)の追加分析




中期経営計画を前提にすれば株価は3倍程度のアップサイド


 パイプドホールディングスは調査分析の結果、CRM業界のなかでも最も高いVG(Value Gap)が存在すると見込まれる。また、来期業績に関して、パイプドホールディングスの予想業績は、当社の中期経営計画を基にしている。そのため、弊社は、当社の中期経営計画の実現可能性について分析を行った。まずは、当社の中期経営計画の概要を簡易に紹介する。

 パイプドホールディングス中期経営計画2020
 2017年の中期経営計画では、セキュリティ面の問題から当初目標を下回る3年間で売上高約1.9倍、営業利益約1.5倍を達成した。セキュリティ面でのリスクによる影響がでたものの、現在はセキュリティ改善に取り組み、経営体制の強化を図っている。来期2020年2月期の見通しについては、売上高7,300百万円、営業利益1,700百万円となっている。営業利益については、18年2月期実績値750百万円の2倍以上、今期予想値500百万円の3倍以上である。

パイプドHD(3919)の中期経営計画 



(出所)会社開示資料よりジェイ・フェニックス・リサーチ作成 
(注)2019年2月12日終値ベース

 今期2019年2月期の業績について
 今期は前期に引き続き、人材採用を加速させている。前期は90人、今期は76人もの採用を達成し、ホールディングス全体で育成させたのち、各社に転籍配属を行っている。また、それとは別に各子会社で個別採用も行っており、2020年業績最大化のための人材確保・育成に努めている。そのため、今期は人件費増加により営業利益が圧迫され、2期連続の下落となった。

 来期2020年2月期の業績予想と売上総利益および営業利益の分析
 しかし、2020年2月期は、一転して採用は控え利益を追求するステージとなる。7,300百万円の売上で1,700百万円の達成を目指すとしている。1,700百万円の営業利益の実現可能性について、個別の四半期情報から分析をおこなった。以下が最近の動向である。

パイプドHD(3919)の四半期個別業績


(出所)FactSetよりジェイ・フェニックス・リサーチ作成

 これで見ると将来を占う上で重要な2つの数値に注目したい。第一は売上総利益/売上高比の70%である。70%程度で非常に安定的に推移している。第二は2018年9-11月の販管費、861百万円である。2017年12月~2018年2月までの四半期と比べると1億円増大している。これが2019年2月期の利益を圧迫している。しかし、2020年2月期においては、採用は控えるため、861百万円程度で維持されると考えられる。この二つの数字から仮に会社計画通りに7,300百万円の売上高が達成する仮定すると、以下の計算がなりたつ。

売上高7,300百万円×70%=売上総利益5,111百万円→①
通期の販売管理費=2018年9-11月の販管費×4倍=861百万円×4=3,444百万円→②
営業利益=①-②=5,111-3,444=1,667百万円

 2020 年2月期の会社計画の営業利益額 1,700 百万円には若干届かない数字であるが、ほぼ 1,700百万円にちかい数字となった。仮にこれが達成されれば、株価には大きなアップサイドがあると想定 されよう。MV/CV=100%となれば、現状は MV/CV=30%程度なので、株価には 3 倍以上の拡大 余地があるといえる。さらに成長価値も上乗せされ、MV/CV=200%となれば6-7倍の上昇の余地の 可能性もあり得よう。 


 ※免責事項 

 本資料には予想・見通し・目標・計画等の将来に関する事項が含まれております。これらは当社が本資料作成時点において入手した情報に基づく、当該時点における予測等を基礎として作成されております。これらの事項には一定の前提・仮定を採用しており、一定の前提・仮定は当社の主観的な予想を含むものも含まれております。また、様々なリスク及び不確実性により、将来において不正確である事が判明し、あるいは将来においてこれらの予想は実現しない事があります。その為、本資料に掲載されている予想・見通し・目標・計画等の将来に関する事項について、当社はそれらの情報を最新のものに随時更新するという義務も方針も有しておりません。同時にその内容の正確性、完全性、公平性及び確実性を保証するものではありません。従いまして、本資料を利用した結果生じたいかなる損害についても、当社は一切責任を負うものではございません。




【執筆
 アナリスト 外山英祐 飯田涼太

編集監修 代表取締役 宮下修, CFA 協会認定証券アナリスト

 ジェイ・フェニックス・リサーチ株式会社(J-Phoenix Inc. )

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