ROIC/WACC業界分析レポート

【ROIC/WACC分析】教育業界





業界ディスクリプション



 教育業界は、学習塾、外国語学校、資格取得学校、企業研修、教材制作など多岐に渡っている。矢野経済研究所の「教育産業白書2018年版」によれば、2017年度における教育産業の市場規模は2兆5623億円で、前年度と比較すると1.8%増で、市場全体としては増加傾向にある。 

 この市場規模の4割近くを占めているのが、学習塾市場である。学習塾は主に学生をメインターゲットに置いており、学校の定期テスト対策などを行う補習塾と、受験対策に重きを置いている進学塾に大別される。さらに運営体制として集団授業を行うか、個別授業を行うかでも分類することが可能である。昨今は、株式会社ナガセが運営する「東進衛星予備校」などにおいて、事前に録画された授業をインターネットを介して個人で受講するなど新たな戦略をとっている企業もある。これは地方の学生で対面の授業を受けることができない学生にとっては大きな利点となるだろう。矢野経済研究所によると、2016年度の学習塾・予備校市場規模は、前年度比0.5%増の9620億円であるが、少子化の影響を受けて今後、市場規模は減少していくと思われる。これに対して、大手学習塾を営む企業は海外進出も視野に入れて動きだしている。 

 外国語学校は、英語などの授業を行う教育サービスである。首都圏の主要駅付近に教室があるケースが多いが、昨今はインターネットを介して自宅からでも授業を受けることができるサービスを営む企業も多い。矢野経済研究によると、2016年度の外国学校の市場規模は、前年度比2.7%増の8498億円であった。2007年に業界大手のNOVAが解約時の清算金の扱いが特定商取引法違反したことにより倒産、2010年にはジオスが倒産した。それらの企業にはビジネスモデルに欠陥があったため、各企業は月謝性の料金体系を充実化させることで対策をとっている。 文部科学省が発表した「グローバル化に対応した英語教育の五つの提言」から、小学校における英語授業の実施、大学入試選抜に民間の英語技能テストを含めるなどの動向により、今後も市場規模は拡大していくと思われる。

 資格取得学校の市場規模は、矢野経済研究所の推計によると2016年度で前年度比1.1%増の1900億円である。昨今、市場規模は縮小する傾向にあったが、横ばいから微増に転じた。若年層が資格取得によって自らの付加価値の向上を狙うという発想が生まれたため、比較的取得しやすい資格や、公務員などの就職系講座などに受講者が増加している。昨今では、「eラーニング」というインターネット経由で手軽に学ぶことができるサービスへの需要も増えている。18年度も引き続き拡大する傾向にあると予測されている。また、2020年の東京パラリンピックを見据えて、接客業において障害者や高齢者サポートやコミュニケーションスキルに関連する民間資格の取得者も増えている。 

 企業研修は、矢野経済研究所の推計では、2016年度の企業向け研修サービス市場は前年度比2.2%増の5080億円となっている。就活において売り手市場となっている背景から、新卒採用の枠を拡大している企業では新入社員を教育・指導する若手社員やリーダー職に対する研修も需要の高まりを見せている。しかし、その研修を行う講師の供給が追いつかず企業研修の請負を調整する企業も存在した。今後はこの対策をとると思われるが、企業研修の市場規模は就職市場が買い手か売り手かに大きく依存している。 

 教材制作は、学校で使われる教材に関しては、少子化の影響で縮小傾向にあるが、新学習指導要領や教育分野でのICT(情報通信技術)推進により、デジタル教材への関心が高まっている。2018年の改正学校教育法により、一部の単元を学習する際に,教科用図書に代えてデジタル教科書のみを使用して学習することも可能となった。さらに、デジタル教科書の使用により,障害のある学生にも、理解しやすい使いやすいデジタル教材の作成が可能となった。そのため、デジタル教材の作成に力を入れている企業は多い。また、リクルートの「スタディサプリ」のように電子端末向けコンテンツの配信サービスに注力する企業も増えている。




ROIC/WACC業界分析



 上記の図表のY軸は、企業価値の時価(Market Value)と簿価(Book Value)を比較した数値である。X軸は、ROIC(投下資本利益率)/WACC(資本コスト)である。日本の全上場企業を調査すると図表の直線Y=(X-1)X+1に収束する。企業が目指すべきは、資本効率性を意識したROIC経営により、X(ROIC/WACC)を大きくし、適切なIRによってY(時価総額/株主資本)を大きくしていくことである。

  教育業界のROIC/WACCと企業価値の分析によると、全体的にROIC/WACCは低めの数値であり、時価総額も理論的な時価/簿価の推計値の割合よりも下回っている。しかし、中では翻訳センター(2483)がROIC/WACC=4.2と抜きんでている。次いで、リソー教育(4714)の3.8である。

  ROIC/WACC(横軸)<1の企業は、WACC(資本コスト)がROIC(投下資本利益率)を下回っている。これは、株主が求める期待収益率/資本コストを上回ることで自己資本に加算される付加価値を生み出していないということである。これらの企業は、早急に自社の資本コストを求め、それを上回るROICを生み出す改善努力が必要である。( 詳細は下記に記載)

  ROIC/WACC(横軸)>1ではあるが、図表の線よりも下に属する企業は時価総額が理論的な企業価値の推計値よりも下回っているといえる。教育業界の企業は、ほとんどがROIC/WACC>1になっているものの、株価が理論的な株主価値の推計値を下回っている状況である。まずは、自社の資本コストを求めたうえで、ROICの向上に努めつつ、資本コストとROICの比率のアピールを含めたIRが必要である。     





ピックアップ



〇事業内容
・翻訳事業
特許分野、医療分野、工業・ローカライゼーション分野、金融・法務分野において幅広くサービスを提供
・派遣事業
機密保持上社外に持ち出せない文書類等の翻訳業務を行う翻訳者派遣や会議、商談、工場見学等の通訳業務を行う通訳者派遣
・通訳事業
大規模国際会議や企業内会議における通訳の請負業務
・語学教育事業
通訳者・翻訳者の養成を目的とした語学教育業務や法人向け語学研修
・コンベンション事業
国際会議・国内会議(学会・研究会)やセミナー・シンポジウム、各種展示会の企画・運営業務

  翻訳センター(2483)は、利益は第三次中期経営計画の当初目標である450を上回る566を達成、ROEは15%を上回り着地。第四次中期経営計画として、ソリューション提案力の強化・言語資産の活用・経営基盤の整備を重点施策として、翻訳事業の高付加価値化を実現を掲げている。今期は、売上高・利益ともに、三期連続過去最高を見込んでいる。配当に関しても、利益成長に応じた継続的な増配を志向しており、今期は35円を見込んでいる。外的要因として、企業の新興国展開の加速、各種経済連携協定の進行、政府のクールジャパン戦略、 2020年の東京でのオリンピック開催など、外国語サービスに関するさまざまなニーズが 考えられ、市場環境は明らかに追い風にある。


リソー教育(4714)
〇事業内容
・学習塾事業
「ひと部屋に生徒一人に先生一人」の全室黒板付の完全個別指導を中心とした進学学習指導
・家庭教師派遣教育事業(株式会社名門会
100%プロ社会人講師が個別指導する進学学習指導を主な事業として、「名門会家庭教師センター」を直営方式で運営
・幼児教育事業(株式会社伸芽会
名門幼稚園・名門小学校への受験指導を行う「伸芽会」、受験対応型の長時間英才託児事業を行う「伸芽'Sクラブ(しんが~ずくらぶ)」を運営
・学校内個別指導事業(株式会社スクールTOMAS
学校内に個別指導ブースを設置して「TOMAS(トーマス)」のノウハウを活かした学校内個別指導塾「スクールTOMAS」を運営
・生徒募集勧誘事業(株式会社TOMAS企画
生徒募集勧誘を主な事業として運営
・英語スクール事業(株式会社インターTOMAS
マンツーマン英会話スクール「インターTOMAS」を運営
・人格情操合宿教育事業(株式会社プラスワン教育
知識教育では埋めきれない人格情操教育指導を教育カリキュラムに組み込んだ事業を「スクールツアーシップ」、「TOMASサッカースクール」、「TOMAS体操スクール」として運営

 リソー教育(4714)は、前年度の売上高は22,584百万円(前々期比8.7%増)、営業利益は2,158百万円(前々期比 5.2%増)、経常利益は2,139百万円(前々期比5.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,381百万円(前々期比8.3%増)となり堅実に伸びている。主力事業のTOMAS(完全1対1の進学個別指導塾)は前々期 より成長戦略として推進している「首都圏サテライト校戦略」の実施により6校を新規開校し、名門会(100%プ ロ社会人家庭教師)も全国に展開している支社・校舎の効率的運営を狙い、TOMASが展開していない地域 (1都3県以外)に個別指導塾「TOMEIKAI」を2校展開し、グループ全体の成長率に貢献している。






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 【執筆】
 アナリスト 小林祐士

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